ワサビは水生植物か?

作成:2017/11/08

更新:2017/11/08

 

一般にワサビといえば、水の中で栽培される水ワサビを連想されることが多い。また、水ワサビの方が根茎等が大きくなることから、水中に最適化された!「水生植物」と思われがちである。しかし私はその意見に賛成できない。ワサビは陸上植物と理解している。ワサビは本来は畑(土)で育つものであり、「水生でも育つことがある」というのが正しい理解と考えているのだ。その理由を説明しよう。

 

さて、およそ水生植物の定義として、「水中や水辺にはえる植物」と単純に理解されていよう。ちょと詳しいい資料だと次の様な定義が与えられている。

 

●神戸の水生植物

http://www2.kobe-c.ed.jp/shizen/wtplant/wtplant/14006.html

> 植物の進化を教料書ではソウ類→コケ類・シダ植物→種子植物の順におき、

> 水中生活から陸上生活への適応を説明しています。

> しかし水生植物とはいったん陸上生活に適応しながら再び、

> 水中生活にもどっていった種子植物およびシダ植物をいい、

> 陸上で生活した証拠を、水面に花を出すことなどに残している植物の仲間のことです。

 

●写真で見る植物用語 2004/5/1 岩瀬 徹 (著),‎ 大野 啓一 (著)

https://www.amazon.co.jp/写真で見る植物用語-野外観察ハンドブック-岩瀬-徹/dp/488137107X

> 水中や水辺に生育域としている植物(海域は含まない)

> 植物の体制によって、浮遊植物、浮葉植物、抽水植物、沈水植物などあがある。

 

以上の資料を文面だけ捉えると、ワサビが水生植物と考えるのも不思議ではない。しかし、以下の資料には「水中で発芽」することも定義に盛り込まれているのだ。

 

●島根大学汽水域研究センター 國井秀伸

http://www.kisuiiki.shimane-u.ac.jp/kunii/kisui_kagaku_2008/class-kisuiiki2008(kunii).pdf

> 植物の発芽は水中か、水が主な基質となっているところで起こる。

 

●異端の植物「水草」を科学する 

https://www.amazon.co.jp/異端の植物「水草」を科学する-BERET-SCIENCE-田中-法生/dp/4860643283

2012/8/9 田中法生 (著)

 

植物の一生が「発芽→成長→開花→種子」というサイクルで連続して行われる以上、その最も肝要な「発芽」能力が水中のワサビに欠如しているのであれば、「水中で生活している」とは認めることは困難ではないか。また、水中で発芽しないということは、種子がその水中を「生活できない環境」と判断していることとも解釈できる。この視点からも水生植物ということを否定できよう。さらにワサビ農家として以下の様なことも経験している。

  • ワサビの種を流れのある水に蒔くと、種はそのまま下流に流されて消滅してしまう。きっと海まで・・・
  • ワサビの種を流れがない水に蒔くと、(おそらく酸素不足で)発芽しない。
  • 湧水の水溜まりは、流れがなく、かつ酸素もあるものの、この中で野生のワサビを見たことが無い。
  • 種を真空パックに入れておくと(おそらく酸素不足で)発芽しない。
  • 1年かけて苗をつくり、水の中に植え替える際、水深が深いと育たない。いずれ消滅する。
    ※苗をわさび田に定植する際に水没による成長阻害を避けるため、当初は新芽が水没しない様な管理をする。
  • 成長したワサビであっても、大雨が降ると、そのまま下流に流され消滅してしまう。きっと海まで・・・
    ※水中生活に最適化しているなら、大雨に対抗できるくらい根が張って(進化して)も良いのではないか?

 さて、水生植物によく見られる特性で、嫌気耐性がある。これは酸素の無い水中で生活する為に、酸素を運ぶ為の管があったりすることである。稲や蓮根で良く知られている「通気組織」がそれだ。また水生植物は、嫌気呼吸によってエネルギーを得て、発芽する。これは糖をアルコールなどに変えることによって得るエネルギーである。一方でワサビには嫌気耐性が全く存在しない。よって、百歩譲ってワサビが水生植物とされても、以下のいずれかが精一杯であろう。つまり 限りなく陸上植物に近い水生植物」か「不完全な水生植物」というのだ。

 

一見して水ワサビは水環境を好んでいる様に見えるが、実際は水の持つ以下、一部の機能を好んでいるだけなのである。

  • 流水の中に含まれる豊富な酸素が吸収できる。
    ※嫌気耐性とは真逆の機能を水に求めている
  • 流水はワサビの中の毒を洗い流してくれる。
    ※植物界最強の抗菌作用にワサビ自身も自己中毒になっている。

 

以上