わさび漬(BU製法)

、作成:2016/02/10

更新:2017/04/17

 

わさび漬といえば全国的には静岡のそれが有名で、所謂「粕漬」になります。一方、中国地方で普通わさび漬と言えば、醤油漬です。まず塩で揉む人、熱湯をかける人、それらを組み合わせる人・・・。その製法は各家庭の味、ワサビ農家の数だけあると言って良いでしょう。

 

ところで「ぶちうま」とは中国地方の方言、「ぶち(=とっても)」+「美味い」の造語です。そして、BU製法とは、ぶちうま製法をダイゴ風に呼称したものです。ネーミングはふざけていますが、製法自体は至って真面目なものと自負しております。というのも、複数の論文を読破し、科学に裏付けされた根拠だけを手順化したからです。そしてこのBU製法の一番の要は温度管理、「70℃」という水温を厳格に守って加工することがポイントです。また、辛味や香味成分の揮発を防ぐ為に、他に細かい工夫等もあります。詳細は下記をご覧ください。

 

さて、本コラムで何度も言及されている通り、わさびの辛味・風味は次の化学変化で生成されます。つまり、わさび細胞内のシニグリン(苦い)が、細胞が破壊されることによって、細胞内の他の部分にあったミロシナーゼという酵素と出逢うことによって化学変化が起こります。その結果、アリルイソチアネートというシャープ系の辛味成分に加え、糖分他香味成分を作り出します。

 

一方、このミロシナーゼの働きは80℃度を超えると、弱まるのです。一方でこの手の技術も注目されています。これが温度管理を徹底させることの根拠となります。

http://www.steaming-cook.com/

> 低温スチーミング(70℃蒸し)をすると、なぜあらゆる食材が美味しくなるのか。栄養価が高まり旨みが増す等々・・・さまざまな利点がいます。

尚、加熱する目的は、他に以下も挙げられます。これはブリーチング(下ゆで/通常調理70~80%程度の軽い熱処理)のそれ(以下1~3)と、ほぼ重なります。

  1. 野菜に付着している微生物を殺菌する。
  2. 野菜に含まれている酸化酵素の働きを不活性化させて、貯蔵中の品質の低下や変色を防ぐ
  3. 加熱する事により、組織が軟化し、細胞が壊れやすくなる。
  4. 発色が良くなりワサビが美味しそうになる(但し2日間しか持続せず、その後徐々に茶に変色する)。

<BU製法準備>

  • 器具:深鍋、菜箸(トング)、温度計、大ザル、片手ザル(あれば)、ボール大、ボール小、スピナー、薄手のポリエチレン袋
  • 食材:ワサビ、醤油、砂糖(お好みで)、みりん(お好みで)

<BU製法手順>

1. 鍋に水を張って加熱する。
2. ボールかシンクに水を張って、葉ワサビ(花ワサビ、ガニ芽)を洗浄する。この時、枯草などのゴミを適宜取り除くこと。

3. ワサビを大ザルに一旦上げる。この際サイズを選別し、複数のザルに上げても良い。これは、異なるゆで時間が調整しやすいこと、後でカットする作業が合理的になる為である。また、ボール大に(冷)水を張る。

4. 鍋の湯が73度になったら火を止める。

5. ワサビをひとつかみ(約100g)鍋に投入し、菜箸で沈め、約15秒/30回程度かくはんする。ワサビに熱が奪われ、約70度まで下降する。

6. (片手ザルで)ワサビを手早く取り出し、ボール大の水に漬けて冷やす。

7. ワサビを上げ、スピナーを使って水を切る。また、洗浄したワサビが無くなるまで、手順4~7を繰り返す。

8. ワサビの細胞を壊す様に強くもむ。但し、手順9.の袋に入れてからでもOKだが、その場合、強すぎて袋に穴を開けない様に注意する。

9. 薄いポリエチレン袋にワサビを入れる(小分けする)。量は一食で食べきれるほど。2人家族であれば100グラムあれば良い。

10. 調味液を入れて混ぜ合わせる。わさびには元々ほのかな甘みもあるが、好みで味醂か砂糖も加える。

10.袋をボール大に張った水に半分沈めながら、袋の中の空気を抜く。袋の中に水が入らない様に注意すること。

11. 袋を縛った後、タッパ等の密閉容器に写し、冷蔵庫で半日以上保管する。食べ頃は24時間後。それから3日かけてどんどん不味くなるので、食べきれない場合は冷凍すること。尚、密閉を怠ると、辛味と風味が揮発しまい、もっと賞味期限が短くなってしまう。因みに、ワサビには強力な抗菌作用があるので、「消費」期限は1か月大丈夫である。但し美味しいとは言えない。

12. 冷凍した際の解凍は、ビニールに水が入らない様にしながら流水中で行うこと。因みに電子レンジを使うと辛味と香が飛ぶので推奨しない。

<参考文献>

  • 酵素量のコントロールによるすりおろしワサビ中のアリルイソチオシアネート保持技術http://www.pref.hiroshima.lg.jp/uploaded/attachment/122619.pdf
  • イソチオシアネート含量の測定方法
    http://astamuse.com/ja/published/JP/No/2011122950
  • 辛味および風味の長期間保持可能な香味食品の製造方法 金印わさび株式会社http://astamuse.com/ja/published/JP/No/2001136930
  • 椙山女学園食育推進センター 客員センター員 中野 典子、わさびの辛味成分と調理
    http://ir.lib.sugiyama-u.ac.jp/dspace/bitstream/123456789/309/1/NATURAL_30_111_121.pdf
  • ワサビの保持栽培に関する研究
    http://kankyo.u-shizuoka-ken.ac.jp/column/26/column_26.htm