おいしい食べ方

作成:2017/03/30

更新:2017/04/19

 

わさびを生かして食う方法。この頃のひとにはわさびはあまり好かれないようであるが、刺身の上にのせて、しょうゆをつけて食べるとわさびは利く。しょうゆの中にわさびを入れてしまっては辛味はなくなる。しかししょうゆの味がよくなる。わさびは最も調子の高い味の素と心得てよい。(北大路魯山人)

 

さて、 以上は経験的に広く知られていることです。しかしながら、このメカニズムについて科学的根拠を解説する記述を発見することができませんでした。そこで以下、個人的に推測してみます。すなわち、ワサビの辛味や香味は揮発して始めて鼻で感じるものですが、それぞれの成分が醤油と出合うことにより液体に溶け込んでしまい、結果として揮発しなくなった、という理由です。因みに、すりおろして水っぽくなるワサビは総じて不味いのですが、この傾向と本仮説は矛盾しません。また、鼻をつまむと、ワサビの辛味や香味を殆ど感じられなくなることから、あながち乱暴な仮説ではないと思われます。 

 

ところで、ある高級寿司屋が擦りおろしたワサビに粉ワサビを混ぜる等の工夫をしている、と聞いたことがあります。全国わさび生産者大会の基調講演に招聘された、ある料亭の調理長が語ったことです。食通を気取っているお客様に「醤油にワサビを混ぜてはいけない」と指導できず、かといって、辛味を失ってしまったことについてクレームを受けたくない、との防衛策と説明していました。妙に納得です。というのも最も美味しく食事して貰いたいのなら、お客様が気分を害さないことが一番大切だと考えるからです。「人は目(≒脳)、鼻、舌の順に味わっている。」私の経験に基づいた、この勝手な持論にも依ります。

 

話が脱線しました。まとめです。刺身に「すりおろした」ワサビを添える時は、次の漫画の方法を採用することを「強く」推奨します。また、もしこの方法を知らない人がいましたら、気分を害さない様にそっと教えてあげてください。醤油ではなく、塩とワサビを添える場合は、この様な配慮は不要です。塩ワサビは鰻の白焼に限らず、白身魚にも相性抜群です。ぜひお試しください。あと量の調節も忘れないでください。およその目安としては、油が多いもの、味の濃い物には多目に使用すると良いでしょう。逆に多くのワサビを淡泊な白身魚に使ってしまうと、ワサビに負けてしまって、素材を活かせなくなることがあります。

<参考文献>

  • 北大路魯山人、料理メモ、1933年
  • 神戸のとある料亭の調理長、全国わさび生産者大会の基調講演にて、2013年
  • 雁屋哲、美味しんぼ6巻 辛味の調和、1986年